カスタマーサクセス
顧客満足度を測定する指標とは、自社商品・サービスに関する顧客の評価を、ある基準に従って数値化したデータです。既存顧客を重視するために、NPS・CSI・JCSIなどの指標を活用する企業も多くあります。
この記事は、主に経営者やWEBサイト運営担当者に向け、顧客満足度とは何か、用いられる指標やKPIの種類、データ収集方法、顧客満足度を測定するポイントなどを解説しています。自社のマーケティングの参考にしてください。
顧客満足度を測定する指標を解説する前に、まずは顧客満足度(お客様満足度・CS)とは何かについて解説します。
顧客満足度とは、自社商品の購入者、利用者が「どれぐらいその商品に満足しているのか」を客観的なデータとして数値化したものです。お客様満足度ともいい、英語圏ではCS(Customer Satisfaction)と呼ばれています。
顧客満足度は業績に直接的な影響を与える重要な要素のひとつであり、今後のマーケティング戦略を決める際にも参考にします。
顧客満足度を各指標によって分析する目的は、リピーターやファンを獲得して売上げを伸ばすためです。また、顧客の声に耳を傾けることによって、自社商品・サービスの改善、新商品開発などにも役立てます。
顧客満足度は1950年代には提唱されていた考え方ですが、1980年代ごろから企業経営の常識として定着しました。その理由は、市場の成熟によって価格競争がより激しくなったからです。新規顧客開拓が難しくなり、既存顧客をより重視するようになりました。現在は顧客満足度を分析して顧客を囲い込むことが、継続的な収益と成長のために重要になっています。
顧客ロイヤリティとは、顧客が企業に対して持つ「愛着」「忠誠心」などの意味があり、顧客満足度を発展させた考え方、指標です。
顧客満足度が十分に高まると顧客ロイヤリティを得られるように思えますが、必ずしもそうではありません。たとえば性能が悪く整備に手間がかかる車であると評価しているものの、特別な愛着を持って乗り続けるようなユーザーもいます。
顧客満足度の分析に使われる主な指標はNPS・CSI・JCSIの3つです。それぞれについて解説します。
NPS(Net Promoter Score)は、自社の商品や企業自体に対する愛着や忠誠心である「顧客ロイヤリティ」を測定したいときによく用いられる指標です。
NPSを使った測定では、「この商品を誰かに推薦・紹介したいか」という質問に対して、11段階で評価してもらうのが基本です。そして9~10点を推奨者、7~8点を中立者、0~6点を批判者の3つのグループに分けます。
最終的に「NPS(%)=推奨者の割合-批判者の割合」の計算式によってNPSを求めます。
CSI(Customer Satisfaction Index)は、自社商品に対する関連性が強い質問を複数行い、それらの平均を取って顧客満足度を測定する指標です。データ数が十分にあれば信頼性の高い結果を得やすいことから、政府機関や大企業の調査などによく用いられています。
質問内容は以下の5項目です。
・顧客期待値
・顧客不満度
・顧客忠実度
・知覚品質(商品に対する顧客の主観的な評価)
・知覚値(価格に対する満足度)
これらの項目に対して、「新商品に対するあなたの期待はどれぐらいでしたか」などの質問を0~100点で評価してもらい、平均値を求めます。
JCSI(Japanese Customer Satisfaction Index)は「日本版顧客満足度指数」と訳され、CSIを日本の産業形態に合わせてカスタマイズした指標です。CSIの5項目に「推奨意向」を加えた以下の6項目で顧客満足度を測定します。
・顧客期待値
・顧客不満度
・顧客忠実度
・知覚品質
・知覚値
・推奨意向(商品を他人に進めたいか)」
1項目ごとに3~4つの質問を行い、0~100点で評価してもらい平均値を出します。最終的に「JCSI=実際に顧客が感じた価値-事前の期待値」で顧客満足度を求めます。
ここでは、どのようにして顧客満足度を測定するためのデータを集めるのかについて解説します。
紙やメールによってアンケートを実施するのはごく一般的な方法です。顧客満足度を分析するためのアンケートでは、CISのように0~100点で評価してもらうケースもあります。しかし、回答者の負担を減らすために、5~10段階程度にすることもよくあります。
営業員が顧客にインタビューする、カスタマーサポートのスタッフなどが電話で満足度や不満などを聞き取る方法です。自由形式で回答する部分が多くなることから、定性的な顧客満足度のデータを収集できることが特徴です。
店内環境や接客態度、顧客の様子などを調査機関がモニタリングして、顧客満足度を推定する方法です。専門業者に任せることで、自社よりも客観的で質の高い調査が期待できます。
アクセス解析ツールによって、WEBサイト上の訪問者の振る舞いを記録して顧客満足度を推定する方法です。「どの商品を重点的にみているか」などの行動データを、顧客の属性や購買履歴と照合しながら分析できます。
チャットボットに入力された要望や問い合わせ内容なども、顧客満足度を測るデータとして使用できます。
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株式会社フリップデスクの「Flipdesk」は、ページ内にタグを設置するだけで簡単導入できるのが魅力のWEB接客ツールです。訪問者の流入経路や購買履歴などの情報を自動で収集するだけでなく、それぞれの状況にあわせてメッセージやクーポン、チャットなど最適な接客が行えます。
顧客満足度の指標を有効活用するには、どうしたらよいのでしょうか。ここでは主に経営者やWEBサイト運営者からの視点でポイントを解説します。
目的を明確にして調査対象を絞らなければ、マーケティングに活用できる情報は集まりません。たとえば既存顧客である自社サイト内の登録会員を対象にするのか、WEB広告やSNS広告で不特定多数にアンケートを実施して新規顧客の情報を集めたいのか、などによってアンケートの内容は変わります。
顧客満足度の元になるデータは顧客の主観的な評価であるため、形のないものを数値化する難しさがあります。
客観性を確保するには、先に紹介したNPSやCSI、JCSIなど実績のある指標を使うことが効果的です。また、後述するように、リピート率や顧客紹介数など顧客満足度に関わるKPIを判断材料にする方法もあります。
期待通りの商品を供給し続けるだけでは、やがて顧客は慣れてしまい、顧客満足度が低くなる傾向があります。現在の顧客満足度を上回るような、期待以上の商品を投入していくことが必要です。積極的なマーケティングによって、既存顧客を定着させつつ新規の顧客を獲得していけます。
顧客満足度は、もともと既存顧客を重視するマーケティングの考え方です。既存顧客の満足度を高めるには割引券や特典を付与するなど手厚いフォローが重要です。ファン・リピーターが増えていくと、そのなかには顧客ロイヤリティを持ち、積極的に他の人に商品を勧めてくれる人が現れます。口コミ、拡散効果によって、売上げが伸びることも期待できます。
信頼性の高い顧客満足度を測定するには、さまざまな経路から顧客の声を収集することが重要です。一定数以上のサンプル数と多様性がなければ、特定の人や企業の評価を過度に重視してしまいかねません。
必要に応じて、オフラインの展示会・セミナーや、オンラインのメールやSNS、WEB接客など複数のチャネルでデータを収集しましょう。
客観的なデータを集めても、最終的にはマーケティング担当者の解釈が必要です。特にインタビュー形式の満足度測定では、聞き取り側のスキルが影響します。会話内容から判断して数値化する場合は、その時点で主観が入ってしまうことも少なくありません。
アンケートにおいても、自由形式の質問を入れすぎると満足度測定の結果が安定しにくく、信頼性を得られないことに注意が必要です。
ここでは、目標とする顧客満足度を達成するために設定されることの多い、5つのKPI(重要業績評価指標)を解説します。
顧客数とは自社商品を購入、契約してもらっている顧客の数です。目的に応じて商品ごとに顧客数を合計することもあります。顧客満足度の指標を調べる際には、顧客数はサンプル数となる重要な要素です。顧客数の増加は顧客満足向上に必要な顧客の声を集める上でも大切です。
コンバージョン(CV)率とは、アプローチできた顧客のうち成約につながった顧客の割合のことです。WEBマーケティングでは、サイト訪問者のうち購入や申込みを行った顧客の割合を意味します。
コンバージョン率を分析することで、成果が上がっている流入経路などがわかります。また、パターンを変えた広告のCV率を比較することで、CVの決め手になった商品説明やブランディングなどを推定できます。
解約率や返品率は、自社商品に対する何らかの不満を示す数値です。解約率や返品率は明確な結果ですが、何が原因で解約・返品をしているか特定しなければなりません。顧客が不満を持っている要素を改善することで、顧客満足度が高まり顧客数が増えていきます。
リピート率とは、継続的に自社商品を購入してくれる顧客の割合です。リピートしてくれる顧客は何らかの理由で自社商品に満足しているケースが多いことから、リピート率アップは顧客満足度向上の目標にもなります。
商品ごとのリピート率を調べることで、品質の高さや、ユーザーのニーズや期待に添ったものだったかも調べられます。
顧客紹介数とは、自社商品を購入した顧客が他社に商品を紹介した数です。紹介した側の顧客を調べることは難しいため、「商品を知ったきっかけ」などのアンケート項目で顧客紹介数を調査するのが一般的です。
顧客紹介数を調べることで、顧客満足度の高い顧客が口コミで新規顧客を取り込んでいるなどの状況がわかります。口コミの内容がわかれば、顧客満足度を高めるためのヒントも得られるでしょう。
顧客満足度を測定できたら、自社商品に対する顧客の主観的な満足度を客観的に数値化するために活用しましょう。代表的な指標にはNPS、CSI、JCSIなどがあり、解約率やリピート率などのKPIなども顧客満足度の測定に用いることができます。