WEB接客
ECサイト上での売り上げアップを狙うには、顧客体験(CX)の向上や効果的なオンライン接客が大切になります。しかし、ECサイトはオンライン上で商品やサービスの購入が完結するため、ユーザーに対して実店舗のようなきめ細やかな接客ができないと思い込んでいる方も少なくないでしょう。
近年、ECサイトでは「WEB接客」や「オンライン接客」の重要性が注目されています。専用のツールを利用してECサイトに接客を取り入れると、売り上げを伸ばしたり、リピータを獲得したりする効果も期待できるでしょう。
本記事では、ECサイトで売り上げをアップするために必要な接客とその重要性、WEB接客を導入する際のポイントなどを説明します。ECサイトでのNG接客も併せて紹介するので、本記事を読んでECサイトでの効果的な接客方法を学んでいきましょう。
ECサイトでの接客とは、ECサイトを訪問してくれたユーザーに対して行うオンライン上での接客を指します。
実店舗で店員から受ける接客とは形式や使用するツールなどが異なりますが、近年はECサイト上でも質の高い顧客体験を得られるさまざまな手法の接客が存在します。
では、ECサイトの接客はなぜ重要性が高まっているのでしょうか。
2023年に行われた総務省の調査によると、日本では2005年頃からSNSや動画投稿サイトなどの普及に伴い、不特定多数のユーザー間でのデータのやり取りが日常的に行われるようになりました。
その過程でスマートフォンやパソコン、タブレットなどの電子機器が急速に普及したため、実店舗に行かなくてもオンラインで商品やサービスを検索したり、簡単に購入したりできるようになり、ECサイトの数も徐々に増えていきました。
さらに、2020年頃の新型コロナウイルス感染症の流行時、実店舗でユーザーと店員が対面した接客を行うことが困難になり、企業が実店舗をクローズしてECサイト上で商品やサービスを販売するスタイルに移行したケースも少なくありません。
このように、ECサイトの需要が急激に拡大し、EC事業主が増えたため、Web上でもより質の高い接客が求められるようになりました。ECサイトでの接客を充実させれば、売り上げの安定やリピータの増加が期待できます。
※参考:総務省.「令和5年 情報通信に関する現状報告の概要」.
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r05/html/nb000000.html ,(参照2024-05-14).
ECサイトでの接客方法は具体的に「WEB接客」と「オンライン接客」の2つに分けられます。ここではそれぞれの接客方法やその違いを詳しく見ていきましょう。
WEB接客とは、ECサイト上で人が介在しないタイプの接客です。
例えばAIチャットボットによる接客サポートや、ユーザーが見ているECサイトの画面におすすめ商品・セール情報などをポップアップで表示させる接客などがあります。
AIを使ったチャットボットは、ユーザーからの商品の在庫状況や配送に関する疑問などに答えるだけではなく、ECサイトの決済に必要なクレジットカード情報や住所の登録などもサポートしてくれるWEB接客ツールです。チャットボットは営業時間を気にせずに、ユーザーが必要なときに必要な情報を引き出せるのが魅力です。
またポップアップ機能は、ECサイトを過去に訪問したユーザーのデータを蓄積し、ユーザーの属性や閲覧・購入履歴、利用しているデバイスやIPアドレスなどの情報を参考にして、ユーザーの嗜好に合わせた商品の提案を行ってくれます。
このように、ECサイトにWEB接客ツールを導入すると、ユーザーのニーズに合わせた商品の提案や接客ができ、顧客対応にかかる人件費などのコスト・手間を省いて効率良く売り上げにつなげることができます。
オンライン接客とは、ECサイト上で人が介在するタイプの接客です。
例えば、ユーザーが商品やサービスの詳細を知りたいとき、ECサイトを運営する企業のスタッフとオンラインチャットやビデオ通話をして質問をしたり、購入を決定したりできるサービスのことを指します。
オンライン接客では、ユーザーとリアルタイムで商品や資料を交えながら商談ができるため、相手のリアクションや表情などを確認しながら効果的な接客を行うことができるのが特長です。
また、さまざまな分野でデジタル化が顕著な現代では、直接人とコミュニケーションが取れるオンライン接客はユーザーに安心感を与え、売り上げにつなげやすいのが魅力です。しかし、不定期な時間帯にチャットやビデオ通話の対応ができるスタッフが必要になるため、企業は人員確保をきちんと行っておく必要があります。
ECサイトで接客を行うと、以下のようなメリットがあります。
ECサイト上のユーザーが、何らかの理由で次のページに進まずにブラウザを閉じたり、他のECサイトに移動したりする行為を「離脱」と呼びます。
ユーザーがECサイトから離脱してしまう主な原因には「商品の質感や色味、サイズ感が分かりにくい」「このサービスに決めて良いか分からない」など、不安や悩みが先行しているケースが多いのが一般的です。そのようなユーザーの悩みや不安を払拭するために、ECサイト上での接客を行うと、ユーザーの離脱を防ぎやすくなります。
例えば、ユーザーがECサイトを閲覧しているときに、効果的なタイミングで「お困りごとはありませんか」「サービスの効果的な使い方はこちら」などのポップアップによる接客を行うなどの方法です。さらにユーザーが使いやすい位置にチャットボットを配置しておくと、 ECサイト上で生じる疑問点を迅速に解決でき、商品購入までの過程がスムーズになります。
また、併せて購入したい関連商品の提案や、まとめ買いをすると割引が受けられるキャンペーン情報の提案を、接客を通してユーザーに与えることで、クロスセルやアップセルを狙いやすくなるのもECサイトでの接客のメリットの一つです。
さらに、AIやチャットロボットによるWEB接客では、深夜や早朝などの営業時間外でも問い合わせができるので、ユーザーの都合に合わせて質問への回答ができます。企業にとっても、常に問い合わせに対応する人員を配置しておく必要がなく、人件費がかかる心配もありません。
一般的に、AIやチャットロボットを扱うWEB接客ツールは、ECサイトを訪問するユーザーのデータを蓄積していきます。そのデータを分析すればECサイトの顧客体験の向上やマーケティング施策に役立てることも可能です。このように、ECサイト上での接客は、ユーザーと企業の双方に多くのメリットをもたらしてくれるでしょう。
反対に、ECサイトでの接客のデメリットには以下のようなポイントがあります。
ECサイトを閲覧する際、WEB接客によるポップアップやチャットボットへの誘導が頻繁に起こると、ユーザーが「邪魔だな」「しつこいな」と感じて 、ECサイトから離脱してしまうケースもあるでしょう。
また、疑問点があるユーザーをチャットボットに誘導しても、AIの回答が機械的に感じられたり商品に関する疑問がうまく解消されなかったりするなどコミュニケーションが成り立たないと、ユーザーの購買意欲を削いでしまいます。
このように、ECサイトの接客はきちんと方法を定めて運営をしないと逆効果になってしまうケースが多いでしょう。そのためWEB接客のツールを導入する際は、導入コストやツールの内容だけで選ぶのではなく、WEB接客の知識が豊富な専門業者を選ぶのがおすすめです。
ECサイトで接客を導入する際、どのようにすればユーザーの顧客体験を高めながら好感度の高い接客が可能になるのでしょうか。ここでは、ECサイトでの接客を導入するに当たり気を付けておきたいポイントを6つ紹介します。
ECサイトでの接客では、一人ひとりに対してパーソナライズされた接客を取り入れていくのもポイントの一つです。
ECサイトを訪問した全てのユーザーに同じ接客をしても、売り上げアップや新規顧客の獲得などの効果は期待できません。それぞれのユーザーが満足のいく顧客体験を得るには、パーソナライズされた接客を行う必要があります。
パーソナライズされた接客を行うには、ECサイトを訪れたユーザーから得た顧客行動データや属性などの情報が必要です。蓄積した情報は既存のツールをうまく活用して分析を行い、ユーザーの心理状況やニーズを導き出しましょう。
ユーザーがECサイトを訪れた理由や、どのような商品に興味を持つ傾向があるかなどが分かれば、各ユーザーの趣味・嗜好に合わせた接客を、最適なタイミングで提供できるようになります。
ECサイトで接客を導入する際、ユーザーがECサイトを訪れた目的や購入に至るまでのプロセスが使いやすいかどうかを意識してみましょう。
ECサイトは、企業がユーザーに知ってほしいセール情報や、商品知識を一方的に提供する場ではありません。前述した通り、オンライン上の接客ではユーザーの顔が見えず相手の感情を読み取りにくいので、こちらの対応が一方的だと「冷たい」「機械的」などのネガティブな印象を与えてしまうでしょう。
そのため接客を導入する際は、ユーザーの目的に沿った情報を最適なタイミングで与えられるようなツールを使うと、顧客体験を高めて売り上げにつなげやすくなります。例えば、ユーザーが特定の商品詳細を閲覧しているときに、ポップアップで類似商品を提案したり、カートに入れた商品に対して有効な割引クーポンの情報を出したりするなどの手法です。
ECサイトで接客を導入する際は、ユーザーがECサイトを訪問した目的を考え、そのニーズを理解した上でユーザーが使いやすい情報や提案をタイミング良く出すと、質の高い接客ができるでしょう。
ECサイトでの接客を導入する際、ユーザーのデータをしっかりと分析するのも大切なポイントの一つです。
ECサイトを訪問したユーザーのデータは、今後より良い接客をしていくための貴重なリソースです。今後の顧客体験を高めるには、まずはデータの分析をしましょう。
データの分析には顧客情報を管理したり分析したりするCRMシステムや、ECサイト上でのユーザーの行動を計測できるWEB解析ツールなどが挙げられます。
ECサイトの売り上げ分析では、Googleアナリティクスを使うとユーザー属性や流出チャネル、サイト内の行動、コンバージョンなどの情報を解析できます。またGoogle Search Consoleを使うと、具体的にどのキーワードを検索してユーザーがECサイトにたどり着いたかを分析でき、今後の具体的なマーケティング施策や接客に活かせるでしょう。
例えば、どのユーザーがどの商品のページに何分くらい滞在したのか、どのような共通点を持つ商品に興味を示したかなどの顧客行動データは、今後取り扱う商品を決める際の参考になります。また、顧客行動データの分析を通じてユーザーの傾向やニーズを把握できるので、今後のマーケティング施策やWEB接客にも活かせるでしょう。
このように、ECサイトで接客を導入する際は、既存のツールやWEB接客専門のツールなどを活用してデータ分析を行い、マーケティング施策やECサイト上の接客、顧客体験の向上につなげていきましょう。
ECサイトの接客を成功させるためには、十分な社内体制を整えておくことも重要です。
特にオンライン接客を行う場合は、インターネットの通信環境が悪いと、ユーザーとのチャットや対話がスムーズにできず、ユーザーに悪印象を与えてしまう可能性があります。しかしどれだけ入念に環境を整えても、通信回線がダウンするなど予期せぬトラブルは避けられません。
このようなトラブルにスムーズに対処して企業の印象を損なわないためにも、緊急時の対応をスタッフに周知しておくことが大切です。例えば、通信回線がダウンした際は迅速電話での対応に切り替えるなど、ユーザーを放置しないような対応策を用意しておきましょう。
また、トラブルが起きたときだけではなく、日頃からオンライン上の接客のシナリオを作ってスタッフで共通認識を持つことも大切です。オンラインチャットでユーザーへの接客を行うスタッフの対応を統一し、接客にムラが出ないようにするなど、社内体制を整えておきましょう。
ECサイトでの接客を導入する際は、自社商品やサービスの特徴を考慮した接客を考えることも大切です。
ECサイトでの接客を取り入れる前に、本当に接客サービスの導入が自社に利益をもたらすのかを考えてみましょう。
例えば、高齢層をターゲットにしたECサイトでは、接客の導入が必要ない可能性もあります。一般的に高齢の方は、接客のツールを理解して使いこなすことに苦手意識を持ちやすいでしょう。そのため、接客に身構えてしまったり、混乱してしまったりする方も少なくありません。このように、ECサイトでの接客は、企業側とユーザー側の双方にITリテラシーがないと成立しにくいのが現状です。
このケースでは、接客を取り入れるよりも、シンプルなECサイト設計にした方が高齢層の顧客体験の満足度を高めやすく、売り上げにつながる可能性が高いでしょう。
反対に、BtoB商材や高額な商品は誰かに相談をしながら決めたいと感じるユーザーが多い傾向にあります。そのため、ECサイトにオンライン接客を導入すると売り上げアップや新規顧客の獲得につながる可能性が高まります。
このように、自社が扱っている商品やサービス、ターゲットにしているユーザーの特徴を照らし合わせてから、ECサイトに接客を導入するか決めましょう。
ECサイトの接客を成功させるには、スムーズな購入導線の見直しや、顧客満足度向上施策を行うことが大切です。
ECサイトの接客では、ユーザーに商品やサービスを購入してもらうことが第一の目的です。そのため、ユーザーが気に入った商品を見つけてカートに入れ、購入処理を終わらせるまでの一連の流れにおいて、スムーズな導線が必要になります。
しかし、ユーザーの離脱やECサイト上のカートに商品を入れたまま離脱する「カゴ落ち」が頻繁に起きているようであれば、ユーザーがECサイトで商品を購入するまでの導線の見直しが必要でしょう。
ユーザーの離脱やカゴ落ちの原因の一つには、商品やサービスを購入する際、面倒に感じる動作が含まれていることが多くあります。例えば、商品の購入に外部アプリのダウンロードが必要だったり、個人情報を多く含む会員登録が必要だったりする場合などです。
このような課題を解決するには、EFO(入力フォーム最適化)を施策として行うと、商品購入時にユーザーが個人情報を入力する煩わしさを軽減して離脱を防ぎやすくなります。情報の入力方法を選択や任意解答にして、ユーザーが入力にかかる時間を短縮するのも良いアプローチでしょう。
また、ユーザーが商品やサービスに対する疑問点を迅速に解消できないときや、ECサイトのデザインが複雑で使いにくいケースも、離脱やカゴ落ちの原因につながり、顧客満足度が下がりやすくなります。
このような課題では、ECサイト上の接客環境を整えたり、UI設計の最適化を行い、初めてECサイトを訪れるユーザーにも分かりやすいデザインに変えるのが効果的です。また、オムニチャネルと呼ばれる企業とユーザーの接点をオンライン・オフライン関係なく連携する施策なども行うと、顧客満足度の向上を狙いやすくなるでしょう。
では、ECサイトでのNG接客とその改善例にはどのようなものがあるのでしょうか。
ここでは3つの例を紹介します。
ユーザーのニーズを無視したポップアップが頻出するECサイトは、NG接客の一つです。
例えば、ユーザーがECサイトを閲覧しているときに、興味がない商品のポップアップが頻出するとどう感じるでしょうか。ユーザーが他の商品を閲覧しているのを邪魔されていると感じたり、不必要な情報のポップアップを消す手間が面倒だと感じたりして離脱が起きる可能性が高まります。
このようなNG接客を改善するには、WEB接客ツールを使って顧客情報を分析し、ユーザーの閲覧履歴に沿った商品を適切なタイミングで提案すると良いでしょう。
ユーザーの好みの商品がポップアップで提案されると「好きな商品が多くあるサイトだからブックマークをしておこう」「もっと好みの商品が見つかるかもしれない」など良い印象を与えやすくなります。
ECサイトでは、提案のタイミングが悪いこともNG接客の要素の一つです。
例えば、ユーザーが商品やサービスを購入した後に、割引キャンペーン中の類似商品の案内が出たり、割引コードの案内が出たりするなどが挙げられます。このような接客ではユーザーが「会計前に案内が欲しかった」と不満を持つ原因になるため、提案を行うタイミングを改める必要があります。
例えば、ユーザーが商品をカートに入れたタイミングで「会員登録をして購入すると30パーセントオフ」のポップアップを出したり、割引キャンペーン中の類似商品の案内を出したりするなどです。ユーザーは「必要な情報が適切なタイミングで提供されている」「お得に買い物ができている」と感じやすくなり、顧客体験の向上につながるでしょう。
ECサイトでNG接客になる要素の一つに、不必要な情報が多いことも挙げられます。
例えば男性ユーザーなのに女性ユーザー向けの商品ばかりポップアップでおすすめされたり、売り切れや取り扱いを中止している商品の情報が出たりすると、商品管理や接客がいい加減な印象を与えてしまうでしょう。ユーザーのニーズを満たすことが第一目的なので、一方的にユーザーが不要な商品のおすすめをしてはいけません。
このような状況を改善するには、WEB接客ツールを使ってユーザーの属性に沿った商品をおすすめし、ユーザーの閲覧履歴に沿った提案ができるような仕組みを作ることが大切です。
本記事では、ECサイトで売り上げをアップするために必要な接客とその重要性、接客を導入する際のポイント、ECサイトでのNG接客とその改善方法などを紹介しました。ECサイトでの接客は店舗販売と異なり、自社の顧客情報をしっかりと分析して役立てていくことが重要です。
自社のECサイトの顧客体験を高め、効果的なWEB接客を導入したいと考えている方は、「Flipdesk」と「Cross Talk」の導入をご検討ください。
Flipdeskは、ECサイト上で、一人ひとりのユーザーにパーソナライズされた接客を行えるWEB接客ツールです。ECサイトに設置しているタグからユーザーの属性や閲覧・購買情報などを収集・分析して、同じような属性や興味を持つ顧客に効果的なWEB接客を適切なタイミングで提供します。
またCross Talkは、ユーザーの必要に応じて有人チャットへの連携を行ったり、AIを利用したチャットボットでユーザーの疑問を迅速に解決してくれたりします。
また、Cross Talkで取得したユーザーのターゲティング条件をFlipdeskに使用できるなど、2つのサービスを同時に導入すると多角的なアプローチができ、ECサイトの接客や顧客体験の向上を期待できるでしょう。
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