チャットボット
企業には顧客からさまざまな問い合わせが寄せられます。企業に寄せられる問い合わせに対応するのは、従業員だけではありません。従業員に代わりチャットボットが対応するケースもあります。顧客からの問い合わせに対応できるチャットボットは、自社で発生する疑問の解消にも対応可能です。
本記事では、チャットボットについて導入のメリットや注意点などを解説します。
チャットボットとは顧客から寄せられた質問に自動で回答するシステムです。日本語では、自動会話プログラムと訳されるのが一般的です。
チャットボットのチャットとは会話を意味し、コミュニケーションツールとして広く使用されています。一方、ボットとはロボットを意味します。両者の機能を備えているのがチャットボットです。例えば顧客が商品の価格をチャットボットに質問すると、適切な回答を顧客に返します。
チャットボットはシナリオ型、FAQ型の2種類に大きく分かれます。
シナリオ型は事前に設定したシナリオに沿って、会話を進めていくチャットボットです。顧客の質問内容に応じて対応していき、求める回答を提示します。シナリオ型はFAQ型と異なり、あらかじめ設定されたシナリオの範囲内の質問にしか対応できません。またFAQ型と比較すると、導入費用を抑えられる傾向にあります。
FAQ型は事前に入力したシナリオ以外であっても、顧客からの質問に対応できるチャットボットシステムです。事前登録した膨大なデータからチャットボットが学習をして、回答精度を向上させていきます。FAQ型はシナリオ型よりも顧客の質問に柔軟に対応できる傾向にあります。
チャットボットは多くの企業や自治体で導入されています。総務省の自治体におけるAI・RPA活用促進調査によれば、情報提供のためにチャットボットを使用している自治体数は、1,788団体中340団体でした(令和4年度)。令和2年度が179団体、令和3年度が282団体だったため、チャットボットを導入している自治体が増加していることが分かります(※)。
このようにチャットボットが多く導入されるようになったのは、技術の進歩が挙げられます。チャットボットの初期型とされるのは、シナリオ型の「ELIZA(イライザ)」です。しかしELIZAは当初、現在のチャットボットのようにユーザーの質問に回答できるわけではなく、決まった返答しかできないためビジネスで使用されることは少ない傾向にありました。
その後、チャットボットはデータを分析する方法の一つである機械学習技術の登場により、従来のものもユーザーとスムーズなやり取りが可能になりました。問い合わせへの回答精度も向上し、チャットボットが実用的になったことで、ビジネスの場面でも広く使用されるようになりました。
※参考:総務省.「自治体におけるAI・RPA活用促進」.https://www.soumu.go.jp/main_content/000934146.pdf ,(参照 2024-05-14).
チャットボットを導入した場合、設置される場所は次の通りです。
チャットボットの設置場所として、最初に挙げられるのが自社サイトです。例えばECサイトにチャットボットを設置すれば、顧客は商品やサービスについて質問できます。サイトにチャットボットを設置する場合、画面の下にチャットアイコンを表示するのが一般的です。
チャットボットは、XやFacebookなどのSNSへの設置も可能です。SNSに設置すれば、顧客に対して商品情報やクーポン、キャンペーン情報などを告知できます。SNSにチャットボットを設置する際は、各SNSが公開しているAPIとの連携が必要です。
アプリにもチャットボットを設置できます。アプリに設置したチャットボットは、操作方法の説明やトラブル対応などに活用されます。
アプリへのチャットボット設置に限った話ではありませんが、スマートフォンでチャットボットを活用する際は読みやすいように調整が必要です。回答の文章が長いとスマートフォンでは読みにくいため、シンプルに回答できるように調整しましょう。
チャットボットは自社向けに使用するケースもあります。業務上の不明点やナレッジなどをチャットボットに質問し、従業員が課題を解決できるなどです。
自社向けにチャットボットを使用する際は、社内チャットツールに設置するケースが多いです。社内ポータルやグループウェアといったように、従業員が日頃から使用する場所に設置するケースもあります。
チャットボットを導入すれば、次のような4つのメリットが期待できます。
問い合わせ対応にチャットボットを用いれば、業務の効率化が図れます。問い合わせ対応業務は、顧客からの電話やメールに対応するだけではありません。問い合わせ内容をまとめて必要な情報をリサーチする作業や、折り返しの連絡も、問い合わせ対応業務の一環です。
問い合わせ対応業務を有人で行っていると、多くの人件費が発生します。例えば、1日の問い合わせ対応業務が3時間発生している企業の場合、ひと月(20日間)で60時間を問い合わせ対応業務に割くことになります。仮に問い合わせ対応のために、アルバイトを東京都の最低賃金時間額である1,113円で採用した場合、電話対応の部分にかかる給与として月に66,780円の支払いが必要です(※)。1年でみると80万1,360円の給与が発生します。実際には1日3時間連続で電話対応をするようなケースは少なく待機中などの時間が発生し得る他、交通費や社会保険料などを含める必要もあるため、コストはさらに増えるでしょう。
このような問い合わせ対応業務を効率的に進める上で、役に立つのがチャットボットです。チャットボットでは回答できない問い合わせだけを有人対応にすれば、担当者の負担を軽減できます。またチャットボットによって問い合わせ対応業務を自動化できれば、コストの削減も実現可能です。
※参考:厚生労働省.「地域別最低賃金の全国一覧」.
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/minimumichiran/index.html ,(参照 2024-05-14).
チャットボットの導入は顧客体験の向上に寄与します。チャットボットが顧客体験の向上につながる理由は、次の通りです。
顧客体験が向上することで、自社の商品やサービスのポジティブな情報の拡散や複数購入による客単価の向上などにつながります。
従業員が問い合わせに対応している場合、顧客は営業時間以外に問い合わせするのは難しいでしょう。一方、チャットボットであれば基本的に24時間365日対応できるため、顧客は時間を問わずに自分の疑問を解消可能です。
従来の有人による問い合わせ対応では、同時に対応できる問い合わせ件数に限りがあります。そのため、顧客は問い合わせできるまで待たなければなりません。人によっては、待ち時間が煩わしくなり、利用を諦めてしまう可能性があります。
チャットボットであれば多くの質問に対応できるため、顧客を待たせることはありません。
問い合わせの対応品質を均一化できるというのも、チャットボットの導入が顧客体験の向上につながる要因です。有人の対応では品質によってバラつきが発生する可能性があります。例えば、経験の浅い従業員と経験豊富な従業員では、問い合わせ対応のクオリティが異なる可能性があるでしょう。クオリティのバラつきはクレームにつながりかねません。
しかしチャットボットの場合、同じ質問に対しては同じ回答をするため、対応品質の均一化と顧客体験の向上が期待できます。
チャットボットを導入すれば、顧客が問い合わせをするハードルが下げられます。顧客によっては、電話やメールでの問い合わせに煩わしさを感じている可能性があります。チャットボットを導入すれば、顧客が気軽に問い合わせできるため、顧客とのタッチポイント増加につながるでしょう。
顧客とのタッチポイントを通じて印象深い体験を提供することで、顧客体験の向上が期待できます。
チャットボットを通じて蓄積した顧客データを分析すれば、顧客への理解を深められます。顧客データの分析に基づいた、パーソナライズされた提案をすることで、より良い購買体験を顧客に提供可能です。その結果、顧客体験の向上につながります。
チャットボットは自社のナレッジ共有にも効果的です。ナレッジの共有は社内マニュアルでも可能ですが、検索性に乏しいと従業員の負担になりかねません。一方、チャットボットであれば必要な情報を打ち込めばすぐに入手可能です。チャットボットでスムーズなナレッジ共有が実現すれば、従業員の教育も効率的に進められます。
またチャットボットを通じてナレッジを共有すれば、属人化の防止も可能です。特定の従業員しか対応できない業務が存在している場合、該当の従業員が不在時に進捗が滞ってしまいます。特に顧客対応に関する内容であれば顧客を待たせてしまうため、ネガティブな印象を与えかねません。チャットボットでのナレッジ共有を可能にしておけば、属人化を防止し、どの従業員であっても対応できるようになります。
チャットボットは採用活動にも活用可能です。採用活動にチャットボットを導入すれば、次のような業務を効率化できます。
採用活動にチャットボットを活用すれば、求職者からの問い合わせに自動で対応可能です。例えば給与をはじめとした条件や応募方法など、求職者は企業に応募するに当たって、さまざまな疑問を抱きます。このような求職者が抱く質問に対してチャットボットで迅速に回答できれば、自社の魅力を効率良く伝えられるでしょう。
採用活動におけるチャットボット活用は、求職者からの問い合わせに対応するだけではありません。求職者に自社の求人情報について発信する際も、チャットボットは活用可能です。例えば求職者からの質問にチャットで対応するだけでなく、求職者への回答を送信した後に関連サイトを発信したり、会社説明会の情報を案内したりといったこともできます。
チャットボットは求職者からの応募、面接予約の受付にも活用できます。求職者からの応募、面接予約の受付をチャットボットで完了させれば、採用担当者の負担を軽減できるでしょう。求職者側にとっても、自分の好きなタイミングで申し込めるというメリットにつながります。
チャットボットを導入する際は、次のようなデメリットもあらかじめ把握しておきましょう。
チャットボットの導入には一定のコストがかかります。チャットボットの導入にかかるコストは、ボットそのものの費用だけではありません。チャットボットを運用するには、シナリオの設定や膨大なデータの読み込みなどが必要です。そのため、チャットボット運用までの準備を担当する従業員のコストもかかってしまいます。
チャットボットは導入してそのままでは回答精度を高められません。回答精度が低いままでは、顧客はチャットボットの使用を止めてしまうでしょう。チャットボットの精度を高めて顧客の利便性を高めるには、定期的なメンテナンスが必要です。
例えばシナリオ型であれば、対応できなかった顧客からの質問の回答を追加したり、Q&Aを追加したりすることが可能です。一方、FAQ型であればチャットボットの学習に必要なデータを追加し、回答精度を高めます。
なお定期的なメンテナンスにあたっては、運用を管理する従業員を立てる必要があります。チャットボット運用の担当となった従業員はメンテナンスだけでなく、チャットボット導入によって、どれだけ目標を達成できているかの定期的なチェックが必要です。
チャットボットを導入しても、全ての質問に自動に回答できるわけではありません。例えば複雑な質問に対しては、チャットボットでは対応できない可能性があります。チャットボットでは対応しきれない複雑な質問が発生した際、回答をせずにいると顧客の満足度が低下してしまうでしょう。そのため、チャットボットから有人対応に切り替えられる仕組み作りも大切です。有人対応にスムーズに切り替えられれば、顧客により良い印象を与えられます。
チャットボットは一度に2つ以上の質問に対応できないのが一般的です。例えばECサイトのチャットボットに対して、顧客が料金と配送日時について一度に質問した場合、料金もしくは配送日時どちらかについてしか回答できません。顧客は再度チャットボットに質問を投げかける必要があります。そのため、人によっては煩わしくなりサイトを離脱する可能性があるでしょう。このような離脱を防ぐためにも、すぐに有人対応に切り替える、電話でも問い合わせできる旨をアナウンスするといった工夫を凝らしましょう。
チャットボットを導入する際は次のポイントを押さえておきましょう。
チャットボットを導入する目的は企業によって異なります。そのため、自社の目的に応じたチャットボットを選びましょう。まずは自社がどのような課題を抱えているのかを洗い出し、チャットボットでどのように課題を解決するのかを検討しましょう。
チャットボットは設置場所に応じたポイントを押さえておきましょう。例えば、自社サイトにチャットボットを設置する場合は、ホームページをスマートフォン対応に仕様の変更が必要です。
またホームページのデザインが古い、コンテンツが少ないとチャットボットを使用する前に顧客が離脱しかねません。
他にも、SNSやアプリ、社内チャットツールなどにチャットボットを設置する際は次のようなポイントを押さえておきましょう。
チャットボットをスマートフォンに対応させるには、回答文を短くするのが望ましいです。回答文が長いと、先述の通りスマートフォンでは読みにくくなってしまいます。そのため、シンプルな回答文で返答できるように設定しておきましょう。
チャットボット導入に当たっては、使いやすさをチェックしましょう。使いやすさは顧客にとってだけでなく、運用を担う従業員にとっても大切です。従業員が運用しやすいかどうかは、チャットボットの無料トライアル期間を活用して確認しましょう。
チャットボット導入によって、目標を達成できたかどうかの確認も欠かせません。目標達成できたかどうかは、改善と実践のPDCAを回していきましょう。PDACは一度回すだけでは十分な効果は得られません。定期的に繰り返していくことで、より良い効果を引き出せます。
チャットボットはチャットとロボットを組み合わせたシステムで、顧客からの問い合わせに自動で回答できるようになるツールです。チャットボットを導入すれば、従業員の問い合わせ対応業務の効率化や顧客体験の向上につながります。チャットボットを導入する際は、自社の目的に応じたチャットボットを選ぶ、ホームページの仕様にも注意するなどのポイントに注意しましょう。
チャットボットの導入なら「Cross Talk」がおすすめです。「Cross Talk」では、取得したデータをマーケティングに活用できます。また有人チャットにもスムーズに引き継ぎでき、顧客体験の向上に貢献します。デザインもシンプルで分かりやすい仕様のため、使いやすいチャットボットをお探しの方はぜひお気軽にご相談ください。